🦷 オールオン4とは
クリニックの宣伝ページではなく、当事者コミュニティの視点で「いいところも、そうでないところも」フラットにまとめました。
すべての歯を、4本のインプラントで支える
オールオン4(All-on-4)は、片顎(上または下)に最少4本のインプラントを埋め込み、その上に前歯から奥歯まで10〜12本の人工歯が一体になった固定式のブリッジを取り付ける治療法です。すべての歯を失った方、総入れ歯が合わない方、残っている歯が歯周病などでほぼ機能していない方が主な対象です。
技術的なポイントは、奥側の2本を30〜45度傾けて埋め込むこと。骨が痩せやすい奥歯のエリアに骨が足りなくても、骨のある場所を選んで長いインプラントを固定できるため、多くの場合骨造成(骨を増やす手術)を避けられます。
通常のインプラントは「1本の歯に1本」が基本で、片顎すべてを補うと10本以上の埋め込みが必要になります。オールオン4は4本で済むため、体への負担と費用を大きく抑えられます。
「その日のうちに歯が入る」——即時荷重
オールオン4のもう一つの特徴が即時荷重です。残っている歯の抜歯 → インプラント埋入 → 固定式の仮歯の装着までを、原則1日で行います。「歯がない期間」を過ごさずに済むことは、患者にとって非常に大きな意味があります。
入れ歯・通常のインプラントとの比較
| 総入れ歯 | オールオン4 | 全歯インプラント | |
|---|---|---|---|
| 固定 | 取り外し式(ズレ・外れあり) | 固定式(自分では外せない) | 固定式 |
| 噛む力 | 天然歯の1/3程度とされる | 天然歯に近い | 天然歯に近い |
| 埋入本数 | 0本 | 片顎4本(〜6本) | 片顎10本以上 |
| 費用(片顎) | 保険適用で数千円〜(自費は数十万〜) | 約200万〜400万円 | さらに高額になりやすい |
| 上顎の床(しょう) | あり(味覚・発音に影響) | なし | なし |
バリエーションとして、インプラントを6本にするAll-on-6(骨が柔らかい上顎などで選択)、頬骨に固定するザイゴマインプラント(骨が極端に少ない場合)があります。詳しくは用語集へ。
費用のはなし
オールオン4は原則自由診療(保険適用外・全額自己負担)です。費用は医院が独自に設定するため幅がありますが、おおよその相場は次のとおりです。
| 片顎(上または下) | 約200万〜400万円が中心(素材・医院により185万〜550万円程度の幅) |
|---|---|
| 両顎(上下) | 約400万〜800万円(高いケースでは1,000万円超も) |
| 最終ブリッジの素材差 | アクリリックレジン系が最も安く、ジルコニアは300万円以上が相場 |
| 別料金になり得るもの | 術前検査(CT)、静脈内鎮静(約10万円)、骨造成、ナイトガード、仮歯の再製作 |
負担を軽くする制度
- 医療費控除: 噛む機能の回復を目的とするオールオン4は原則対象です。確定申告により、所得によっては数十万円規模で税負担が軽くなる試算例もあります(課税所得300万円・治療費300万円で約58万円の軽減例)。通院の公共交通費も対象。過去5年分まで遡って申告できます。
- デンタルローン: 実質年率3〜8%程度で、最長120回超の分割に対応する医院もあります。250万〜300万円を120回払いにすると月々2万〜3.2万円程度が目安。ローンで支払った場合も、立て替え払いされた年の医療費として控除対象になります。
治療の流れ(全体で6〜7か月が目安)
- カウンセリング・精密検査 — 歯科用CTで骨の量・神経の位置を確認。ここで複数の医院を比較するのが後悔しないコツです。
- 治療計画の説明 — 埋入位置のシミュレーション、費用・リスクの説明。
- 手術当日 — 抜歯 → 4本埋入 → 仮歯装着まで1日で。手術自体は1〜2時間、半日で終わります。多くの医院で静脈内鎮静法(うとうと眠ったような状態)を併用し、入院は原則不要です。
- 仮歯期間(約4〜6か月) — 骨とインプラントの結合を待ちます。仮歯は「リハーサル用の歯」で、この期間の使い心地が最終ブリッジの設計に反映されます。気になることは遠慮せず伝えましょう。
- 最終ブリッジの製作 — 型取り・噛み合わせ調整・試着で通院4〜5回程度。
- 最終ブリッジ装着 — 治療はひと区切り。ここから先は3〜6か月ごとの定期メンテナンスとの長い付き合いが始まります。
ダウンタイムの目安: 腫れ・痛みのピークは術後2〜3日で、1週間前後で落ち着くのが一般的。仕事復帰はデスクワークで3日程度、接客業で5〜7日、肉体労働で1週間以上が目安とされます。
受けられる人・受けられない人
主な対象
- ほぼすべての歯を失っている、または残っている歯の保存が難しい
- 総入れ歯が合わない・安定しない
- 全身状態が手術に耐えられる
慎重な判断が必要・受けられない場合
- 年齢: 下限は骨の成長が完了する18〜20歳。上限はなく、健康状態が良ければ80〜90代の症例もあります。
- 骨の状態: 極端に骨が少ない・弱い場合(All-on-6、ザイゴマ、骨造成を検討)。進行した骨粗しょう症や、骨吸収抑制薬(ビスホスホネート等)を服用中の方は、顎骨壊死リスクを考慮した内科との連携が必要です。
- 全身疾患: コントロール不良の糖尿病・高血圧は感染・治癒不全のリスクが高く不可。コントロールできていれば可能な場合があります。
- 喫煙: 血流悪化で骨結合の失敗・周囲炎リスクが上がるため、禁煙を条件とする医院が多数。
- 通院・セルフケアを続けられない方(オールオン4は「入れたら終わり」ではありません)
メリットとデメリット——正直に
メリット
- 手術当日に固定式の仮歯が入り、「歯がない期間」がない
- ズレない・外れない。噛む力は天然歯に近く、食べられるものが大きく増える
- 上顎でも口蓋を覆う床がなく、味や温度を感じやすく、発音を妨げにくい
- 歯茎の部分まで含めて見た目を設計でき、顔の印象が変わったという声が多い
- 全歯インプラントより手術の負担・費用が小さく、骨造成を避けられることが多い
デメリット
- 残っている歯はすべて抜くのが前提。使える歯が複数残っている人には基本的に不向きで、「まだ使える歯を抜いた」ことを後悔した例も報告されています
- 高額(片顎200万円〜)で全額自己負担
- 外科手術のリスク(腫れ・痛み・出血、まれに神経損傷)
- やり直しが難しい。4本のうち1本でも失敗すると全体に影響します
- 一体構造のため、一部の修理でも全体を外す必要がある場合があります
- ブリッジ(上部構造)は消耗品で、5〜10年で修理・作り直しの可能性があります
- メンテナンスを怠るとインプラント周囲炎で失うリスク。生涯メンテナンス費もかかります
- 対応できる医院が限られ、術者の経験差が結果を大きく左右します
何年もつ?——「一生モノ」ではありません
- インプラント体(骨の中の部分): 10〜20年以上が目安。10年生存率は90〜95%というデータが紹介されています。
- 上部構造(ブリッジ): 消耗品です。素材にもよりますが5〜10年で摩耗・破損による修理や作り直しがあり得ます。実際に「10年でインプラント体は良好、ブリッジはジルコニアに総やり替え」という経過例があります。
- 寿命を最も左右するのはメンテナンス。多くの医院の保証(5〜10年程度)も「定期メンテナンスの継続」が条件です。